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仙台家庭裁判所 昭和33年(家)926号 審判 1958年7月09日

国籍 米国マサチュセッツ州 住所 同州

申立人 (夫)グレン・チャールス・ハリソン(仮名)

国籍 韓国 住所 仙台市

申立人 (妻)唐自玉(仮名)

本籍 住所 仙台市

事件本人 杉本努(仮名)

主文

申立人等が未成年者杉本努を養子とすることを許可する。

理由

申立人等は主文同旨の審判を求め、その申立の実情として、

一、申立人グレン・チャールス・ハリソンは、米軍人として一九五四年(昭和二十九年)来日し、翌年仙台○○キャンプに来り、昨年七月埼玉県○○キャンプに移り、十月に帰国し、現在、米国において軍務に服している。申立人唐自玉は、北海道に生まれ、仙台市に長く居住しているが、昭和三十年頃ハリソンと知り合い、昭和三十一年五月から夫婦として同居し、昨一九五七年五月○○日東京において正式に婚姻の手続をした。両名の間には、本年○月○日女児ルビーが生まれた。

二、未成年者杉本努は、申立人唐目玉の姉である唐達恵(申立人の近隣に居住)の隣人の子であるが、生まれると間もなく、その母(氏名不詳)は、努を達恵にあずけたまま所在をくらまし、いまだに、どこにいるか知れない。申立人両名は、努が可哀そうなので昭和三十年九月から手もとに引き取り養育してきた。

三、申立人両名は、努を正式に養子にしたいと考え、婚姻手続当時養子縁組の申立をするため、申立人ハリソンの所属していた部隊係官の証明書の下付を受けたのであるが、手続が延引し、申立人ハリンンは、昨年十月帰国したのであるが、帰国に際しても、同人は、努を養子にして母子ともに渡米するように言いのこして行つた。同人は現在も、努を養子にすることを希望している。なお、在米する申立人ハリソンの母も、早く、努を連れてくるように手紙で再三、言つてきている。

以上の次第で、孤児である努の福祉は、この養子縁組により増進されると信ずるので、申立人等が右努を養子とすることの許可を求めたく本申立に及んだ旨述べた。

当裁判所は、申立人唐自玉と未成年者努の後見人とを尋問し、努の戸籍謄本、申立人グレン・チャールス・ハリソンが所属していた部隊係官の申立人等の身分関係等に関する証明書、申立人ハリソンの出生証明書、申立人唐自玉の外国人登録証明書、申立人等の結婚証明書および申立人ハリソンの当裁判所あて一九五八年六月五日付書信を参照した。

その結果によれば、申立人等が本件申立の実情として述べる右事実は之を認めることができ、且つ、右事実に徴すれば本件養子縁組により未成年者の福祉は増進することができるものと認められる。

申立人唐自玉は、現在まだ韓国国籍下にあるものではあるが、すでに申立人ハリソンと正式に婚姻し、その妻としての身分を有するものであり、やがて、夫ハリソンの許において米国国籍を取得する見込あるものであるから、本件養子縁組の準拠法規としては、未成年者の本国法である日本国民法と、夫である申立人ハリソンの本国法である米国マサチュセッツ州法を参照すれば足りるものと解すべきところ、右州法中養子縁組に関する部分に照らしても、本件養子縁組は適法になし得ることが明らかである。

よつて、本件申立は、之を許可することが相当であると認め、主文の通り審判する。

(家事審判官 市村光一)

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